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『呪われ姫』SSです

本編が遅々として進まないせいか、
作者の中でもフラストレーションが溜まりまくりorz
SS書く時間があるなら本編を書けや、
と自分でも思うのですが、
書こうと思っても筆が進まないから、
こういうSSを思いついちゃうわけで。
思いついちゃったからには、
気分転換も兼ねて書いてみたいわけで。

ということで『呪われ姫と婿入り王子』の
ちょっとした日常の一コマ。
時系列で言うと、だいたい『蜜月期』あたり。
クラウドが旅立つちょい前くらいですかね~。

では、どうぞw


*****

「……まぁ」
 扉の向こうに見えた光景に、リーシュはぱちくりと瞳を瞬かせる。
 音を立てないようそっと扉を閉めた彼女は、改めて窓辺に視線を向けた。
 日当たりのよい夫婦の居間の窓際には、小さめのテーブルと安楽椅子が置かれている。
 王族の姫として生まれながら、女王の地位にあるリーシュには、その椅子に腰掛けくつろぐだけの時間はほとんど与えられていなかった。
 けれどもここ最近は、隣国から婿入りした王子で、ローフェルム公爵位を持つ夫クラウドがいろいろ手伝ってくれるため、彼女にもずいぶん自由な時間が増えてきた。
 その時間を利用して、この頃夫は妻を乗馬や散歩に頻繁に連れ出すようになっている。
 けれど今日は議会で上がった案件について、宰相のムーアと話したいことがあり、いつもより執務の時間が長くなってしまったのだ。
 クラウドはクラウドで調べ物があったようだが、どうやらリーシュが手が空くより先にそれが終わっていたらしい。
 その彼は今、ゆったりとした安楽椅子に腰掛け、気持ちよさそうな表情で眠り込んでいた。
 膝には広げられたままの法律書がある。女王の婿として、空いた時間もこの国のためになることを学んでくれているのだと思うと、リーシュの胸はたちまち温かいもので満たされていった。
(けれど、こんなふうにうたた寝なさるなんて、めずらしいこと……お疲れだったのかしら?)
 すやすや眠っている夫を起こすのも忍びなく、リーシュは慎重な手つきで法律書を取り上げる。添えられていた右手がぱたりと膝に落ちて、夫の眉がわずかに顰められた。
 起こしてしまったかと慌てたが、彼は「ううん……」と小さくうめいて、またすやすやと眠り込んでしまう。なんだかいつもより子供っぽく見える仕草に、リーシュの頬は自然と緩んでしまった。
 とは言え、そろそろ日が落ちる。このままでは風邪を引いてしまうと、一度夫婦の寝室に入ったリーシュは、膝掛けとガウンを手に居間に戻った。
 広い肩と膝を包むようにそれらを着せかけ、ひとまずほっと息をつく。
(……綺麗な寝顔……)
 抱きしめられたときもそうでないときも、たいてい夜はリーシュのほうが先に眠ってしまって、朝は彼のほうが先に目覚めているので、寝顔を見る機会はずいぶん減ってしまっていた。
 ジェノスに叩き起こされていた頃は、端正な寝顔に何度かどきりとさせられたが、慌ただしく寝台を抜け出さなければならなかっただけに、こうしてじっと観察する時間は与えられていなかったのだ。
 だからというわけでもないが、リーシュはついまじまじと夫の寝顔を見つめてしまう。
(ただでさえ美しいお顔立ちなのに……眠っていてもとても素敵)
 伏せられた睫毛はとても長く、差し込む陽光にきらきらと淡く輝いている。
 同じ色の金髪は癖もなくさらりとうなじを覆い、薄く開いた唇は、こんなときでさえどこか艶っぽく感じてしまう。
 その唇から、昨夜寝台の中で紡がれた言葉を思い出した途端、それまで絵画を見つめている気分だった胸がたちまち鼓動を刻み始め、リーシュはつい頬を赤く染めてしまった。
(わたくしったら、いったいなにを考えているの……)
 日のあるうちからはしたない……そう自分を戒めながらも、夫を観察する視線をなかなか外すことができない。武人でもある彼がこんなに無防備な姿を晒していること自体、とてもめずらしいことだから、できるだけ長く見つめていたいという欲求が勝ってしまうのだろう。
(それにしても、本当に起きる気配がないわ)
 唇から漏れる寝息は深く、体中から力が抜けている。
 その呼吸音をしばらく聞いていたリーシュだが、ふと、悪戯心に似た衝動が芽生えてくるのを感じた。
「……」
 こんなことをして大丈夫かしら、起こさないかしら、と思いながらも、音を立てないよう気をつけながら床に静かに跪く。
 膝立ちになり、彼女はわずかにうつむいた夫の顔を、すぐ真下からじっと見上げた。
 相変わらず夫は起きる気配がない。長い睫毛の中に、何本か銀色に光るものが混ざっているのを確認して、朝露を含んでいるようだと思った。
 なんて綺麗なんだろう……そう思うと同時に、愛おしい思いが込み上げてきて、リーシュはそっと伸び上がり、彼の薄い瞼に唇をふれあわせた。
 下唇に睫毛の先がかすかにふれる。わずかな震えを感じた気もしたが、相変わらず夫は起きる様子もない。
 リーシュはわずかに躊躇ったが、込み上げる欲求に負けて、そっとその唇にもふれてみた。
 しっとりとした弾力と温かさが伝わり、思わずため息のような吐息を漏らしてしまう。
 彼の唇から漏れる寝息と自分の呼吸が混ざり合うのがわかって、背筋にふるりと甘い震えが走った。
(クラウド……)
 胸の中で、自然と彼に呼びかけてしまう。
 愛おしくてたまらなくて、自分のつたない口づけだけでも、胸がいっぱいになってしまった。
「……ん……」
 あまりふれていては目を覚ましてしまうかも知れない。けれど少しでも長くふれあっていたくて、彼が動かないのをいいことに、つい角度を変えて再び口づけてしまう。
 温かな吐息がかかるのにうっとりとしていると、ふいに、膝掛けに置かれていた彼の手がぴくりと動いた。
 目を伏せていたリーシュはそれに気づかず、力強い腕が肩に回され、ぐっと引き起こされるのを感じた瞬間、びっくりして悲鳴を上げてしまった。
「んんっ……!?」
 その悲鳴もたちまちくぐもったうめきになり、食らいつくような口づけを浴びたリーシュは目を白黒させる。
 だが見開いた瞳いっぱいに、夫の薄青の瞳が映り込んできた途端、リーシュはたちまち息を呑んだ。
「く、クラウドさまっ!」
「なんです? いたずらっ子の女王様?」
 揶揄するように呼びかけられ、リーシュはぼっと真っ赤になる。
 あわあわしているうちに膝上に横向きに抱え上げられ、一気に縮まった距離に、どうしようもなく恥ずかしくなった。
「ご、ごめんなさい。お起こしするつもりは……っ」
「構いませんよ。こういう起こされ方ならむしろ大歓迎です。毎日でもしてほしいくらいだ」
 こめかみに口づけながら、クラウドは軽い調子で言う。
 怒っている様子はなさそうだが、明らかにおもしろがっている響きがあり、リーシュとしてはいたたまれない。
 思わず口元を押さえてうつむく彼女に、クラウドはくすくす笑いながら、長い腕を巻き付けてきた。
「口づけでなくても構いませんよ。そうだな、たとえば……服を脱がせるとか。あなたにならいつだってやられていい」
「そっ、そんなはしたないこと、いたしません!」
「寝ている人間にキスはするのに?」
 意地悪く問い返され、リーシュはぐっと言葉に詰まる。
 恥ずかしさのあまりふるふる震えながらも、リーシュは精一杯虚勢を張った。
「も、もう二度とこんなことはいたしませんから! どうぞお好きなだけお眠りに……きゃあ!」
 彼の膝から降りようとしたリーシュだが、次のときには横向きに抱き上げられていた。
 慌てて夫の首筋にしがみつくと、意地の悪いという表現がぴったりの笑みを浮かべた夫が、至近距離で囁いてくる。
「連れないことをおっしゃらないで。それに、二度寝するなんて無理です。あなたの可愛い悪戯のせいで、すっかり起きて(・・・)しまいましたから」
「起きるって……」
 あれよあれよと寝室に連れ込まれ、寝台にふわりと降ろされる。
 あまりよろしくない雰囲気を感じ取り、彼の腕が離れた隙に逃げだそうとしたが、あっさり抑え込まれて、右手をがっちり掴まれる。
 そしてそのまま、指先を彼の中央へと導かれた。
 布越しにはっきりとそそり立ったものを感じ取り、リーシュは息を呑んだまま、真っ赤になって固まってしまう。
(お、『起きる』って、そういう意味なの――っ?)
「ひとの眠りを遮った責任は、きちんと取ってくださいね」
 にっこりと、綺麗すぎて怖いとすら思える笑みを向けられ、リーシュはひくっと口元を引き攣らせる。

 ――日が落ち、入浴の時間になっても姿を見せない主夫妻に、老侍女たちは一様に首を傾げたが……、寝室の扉の前を通るなり、なるほどと納得してそそくさと退散していった。
 さらに数時間経ってもふたりが姿を見せなかったため、扉の前に夕食と飲み物だけを用意して、さっさと控えの間に下がる。その顔には「若いっていいわねぇ」というほくほくとした笑みが浮かんでいた。
 だが当事者であるリーシュはすっかり疲れ果ててしまい、意識を失う寸前、寝ている夫に二度と悪戯心を芽生えさすまいと固く誓ったのであった――

*****


肝心のRシーンどこへ行った? という感じですが、
ほらっ、ここブログなので、一応そこ自重なのですorz
それにこういうSSに無理にエロを入れる必要はないと思うし。
さらっと読めるからいいんじゃない、と思います。

積極的なリーシュと受け身のクラウドもいいですよね~。
反転するのはまぁお約束ということで(苦笑

ちなみにクラウドは薬とか使われない限り、
眠っていても感覚の一部は起きている状態なので、
リーシュが近づいてきたときも「あ~、リーシュだ~」
という感じで、ちゃんと認識はしています。
起きなかったのは、それこそリーシュになら
なにされてもいいくらいに思っているから。
とはいえキスされるのは予想外だったはずで、
(せいぜい寝顔観察されるくらいだと考えていた)
躊躇いがちにちゅーされて、
びっくりして理性飛んだ感じになっております。
そう考えるとまだまだクラウドも若い、というか青いよね(笑


そんな感じで突発SSでしたw
本編は……筆が進み次第……上げていきます……orz
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コメントありがとうございます。

華影さん、こんにちは。

離ればなれだといちゃいちゃさせたくてもできませんからね(苦笑
楽しんでいただけたようでなによりでしたw
そしてわたしはキャラを可愛いと言われてにやにやしていて、
それを旦那君に白い目で見られていたりします(笑

本編もお待たせしてばかりで申し訳ないのですが、
そう言っていただけるとちょっと肩の荷が下ります(安堵


そちらの本編も楽しみですね~w
きもい会話もどんとこいですw
楽しみにしております!

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コメントありがとうございます。

こんにちは、風波さん。

うちも昨日は実家の家族に出てきてもらって、
ラノベやら漫画やら荷造りした奴を一時持っていってもらいました。
本だけで段ボールが十個以上になるとかorz
もう電子書籍派に移行しようかと真剣に考えちゃいましたorz

うちは明日引っ越し屋さんに見積もりにきてもらう予定。
うわぁ、結構見積もりだけでも時間がかかりそうですね(汗
ただでさえ散らかっているところにきてもらうのも気が引けるけど(苦笑

SSお読みいただきありがとうございますw
忙しい中、ちょっとは癒しになったでしょうか?
クラウド視点で書くのもおもしろそうですね! 需要あるかな?
また別のシチュエーションで、今度はクラウドに責めてもらうのもいいかも(笑

今週はとにかく忙しいですorz
明日は見積もりでしょー、明後日は産婦人科でしょー、
しあさっては新居の鍵をもらって掃除しに行くでしょー、
んで翌日には引っ越しですよorz

でもネットの工事がその翌日の29日になったので、
さほどネットから離ればなれになることなく済みそうです(笑
場合によってはそのあとすぐに里帰り予定。
実は引っ越しに時間割いているせいで
入院の準備とか全然していないんです(汗
引っ越しが終わったら母と一緒にイオンあたりに繰り出す予定orz
本編書きたいけど、もうわたしの中ではぶっちゃけあきらめモード全開ですorz
Secre

プロフィール

佐倉紫

Author:佐倉紫
『ベリー・ウィッシュな日々』
育児他、日常のつれづれ日記。
時々Web小説の更新情報。
商業紙などのお仕事情報。


―佐倉紫(さくらゆかり)―

一月生まれ。水瓶座。
夫、娘○子(三歳四ヶ月)、
息子○市(一歳九ヶ月)と
ほのぼの四人暮らし。

TL作家として既刊あり。

ムーンライトノベルズ様
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『疑われたロイヤルウエディング』
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『白薔薇は束縛にふるえる』
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『王家の秘薬は受難な甘さ』
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