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出産・入院期 3

~3 出産~

四時になるころ、いきむと同時に
ぶしゃーっとなにかが股から溢れ出す。
一瞬おしっこかな? とびっくりしたけど、
「ううん、破水しただけよ。羊水が出てきてるんだよ」と
看護婦さんに言われ、ああ、そんなもんか~、と思う。
いきむたびにぶしゃーっと出てくるのに、
なぜだかふなっしーの梨汁ぶしゃーを思い出すわたし。
相当きている証拠だな、と自分で自分に突っ込み入れつつ。
赤ちゃん出すというより羊水を出すみたいな作業になってるなぁ、と
苦しみながらあはははと脳内で笑って自分を慰めるorz

羊水が出ているせいというわけではないだろうが、
いきみのせいで汗がいっぱい出てくる。
当然喉も乾くので、痛みにあえぎながらも
「お水飲みたいです」と切れ切れに訴え。
すぐにぬるま湯程度になったほうじ茶を看護婦さんが持ってきてくれる。
ストローを差し出され呑んでみるも、
案の定むせるorz ごほごほと咳すると、
それがまた腰に響いて痛い痛いorz
結局一口も飲めずに断念orz
けどやっぱり喉が渇くので、十分後再び注意して飲んでみる。
が、呑んだ瞬間ぐらりと視界がゆがんで、
なんだか吐きそうに気持ち悪くなってくる。
気持ち悪いとつぶやくと、陣痛中は痛みのせいで、
食べたり飲んだりすると気持ち悪くなることがあるんだよと教えてもらう。
え、ということは水分補給も今後できない感じ?
うわっ……水も飲まずに戦えと? とさらに気分は沈む沈むorz

水も飲めず、腰がもう割れそうに痛くて動くに動けないorz
痛みに合わせていきむも、だんだん眠気も戻ってきて、
いきむ~、寝る、いきむ~、寝る、を繰り返す感じに。
もうここら辺から精神的にも限界にきて、
「早く赤ちゃんに会いたいな~w」とかいう
平和的な気分はかけらもなくなり、
「もうさっさと終わりにしたい」という気分しかなくなる。
赤ちゃんがどうのこうのじゃなくて、とにかく痛みから逃れたい。
そして安らかに眠りたい。
その思いから、看護婦さんに五分ごとに
「赤ちゃん、どのくらい出てきてます?」と聞きまくり。
そのたびに「いきんだときに大体これくらい出てきてるよ」と
両手で輪を作って律儀に教えてくれる看護婦さんたち。
「今赤ちゃんの髪の毛が何本か見えてるよ」と言われ、
まだ髪の毛だけかよ……聞かなきゃよかった、とため息orz
でも性懲りもなくいきむたびに「どのくらい出てますか」と聞くわたしorz
もうこのころになると絶望レベルもマックスになっていて、
腰が割れる、股が裂ける、そして大量に出血してわたしは死ぬんだ、
とか本気で考え始める。未来は暗く絶望しかない、とか思い始める。
「頑張ればもう少しで赤ちゃんに会える~w」とか
全然思わないで、死ぬことばかり考えるわたし。
どんだけネガティブなんだと我ながら思うけど、
本当にこのときはそのことしか考えられなかった。

そして五時半近くなってようやく理事長先生が呼ばれる。
この頃にはもうしゃべる気力もなくなって、
痛みがこないときはひたすら寝る。実際意識が落ちそうになる瞬間もちらほら。
○子ちゃんはそのあいだもずっと心臓ばくばく動いていて元気だったけど、
ぶっちゃけわたしのほうがもういろいろ限界。
しばらくわたしがいきむ様子を見ていた理事長先生。
もう先生がきたんだからこの痛みからも解放される、
と思うのだけど、理事長先生、
途中でおもむろにパイプいすを引き寄せると、
そこにどかっと腰かけてしまう。
えー、つまりはまだまだ時間かかるってこと? と
再び絶望に突き落とされるわたしorz

とはいえもう出産はすぐそこらしく。
「旦那さん呼びます?」と聞いてくれる看護婦さん。
なにげわたしが分娩室に入ってからも、
事務所のほうからちょこちょこ様子見にきてくれていた旦那君。
これまで立会いしない方向でいたけど、
職場の人々に「立ち合いは絶対するべきだ」と言われ、
本人もその瞬間を見届けたい気持ちにかられたらしく、
立ち合いの希望を伝えていたらしい。
ただこのときの旦那君、結局風邪をこじらせて、
喉を完全にやられている状態だった。
そのため理事長先生からは「立ち合いしてもいいけど、
そのせいでお母さん(わたしのこと)が風邪ひいても
僕責任取らないよ」と伝えられていた。
そのため旦那君も立ち合いはできないなとあきらめていたらしい。
けれどわたしが痛み逃がしの最中に、
旦那君が本当に○子ちゃんの誕生を楽しみにしていたんです、
と話したのを看護婦さんたちはちゃんと覚えていて、
立ち合いさせてあげたほうが……と理事長先生に掛け合ってくれたのです。
理事長先生も「まぁ楽しみにしていたんならしゃあないね。いいんじゃない?」と
軽いノリでOKを出してくださり、
マスクと被り物と手術服っぽいのを着た旦那君が通される。

ということでいよいよ出産。
そのあと、さらに三回くらいいきんだあと、
おもむろにわたしに言う理事長先生。
「もう疲れたでしょ? 陰部、切っちゃおうね」と。
もしかしたら切るか吸引になるかも、と聞いていたし、
ぶっちゃけもうさっさと終わりにしたい、休みたいという
気分でいっぱいだったので、一もにもなく
「はい、切っちゃってください」とうなずくわたし。
もはや切ることへの恐怖よりも痛みを終える瞬間しか考えられない。
切る準備をしながら、
「大丈夫、先生プロだから。傷口縫うの上手だから」と笑う理事長先生。
一方、息も絶え絶えのわたし、
「そうですか。プロが言うなら大丈夫ですね。
お願いします。先生大好きです」とぜいぜいしながらなぜか告白。
爆笑する看護婦さんと助産師さんと旦那君。失礼な奴らめ。

そしていよいよ出産。
次に痛みが来たら思いっきりいきめ、と言われ、
いよいよきたので頑張っていきみ続ける。
痛いのがいよいよ外に出るーっていうのがよくわかるorz
いきんでいきんで、という言葉の合間に
「ぱちんっ」って音がして、出口が広がるのがはっきりわかった。
けど痛みはなかったな。赤ちゃんを出す痛みのほうが勝っていた。

もうしんどかったから一度で出したかったけど、
案の定息が続かなくなって、
叫び声とともに詰めていた息を吐き出しちゃう。
痛みのあまり全身痙攣させながら「もうやだ~」と叫ぶわたし。
そんなわたしに「もう一回で終わり。本当に最後だから」と
力強い声で宣言する理事長先生。
次の痛みと同時に思いっきりいきめ! と言われ、
ぜいはあしながら、「もうやだ。けど逃げるの選択肢がないから
頑張るしかない。なんということだ」とさらに絶望するわたし。
どんだけ絶望しているんだという状態。
そうこうしているうちに痛みがやってくる。
しゃあないので精いっぱいいきむ。
痛みのあまり背がしなりそうになるのを看護婦さんが必死に止める。
「反り返っちゃダメ! おへそのほう見て!」
いきみながらなんとか首を前に倒すわたし。
同時に「はい、目を開けて!」と言われ、
閉じていた目を言われるまま開けてみる。
すると股のあいだになんか変なのいるのが見えて、
思わず「うええっ!?」とひきつった声をあげてしまう。
その瞬間、

にゅろん、

という感覚とともに、○子ちゃんが滑り出てくる。
次の瞬間にはもう泣き声が響いて、
「はい、産まれた~! おめでとうございます~!」と
看護婦さんたちに言われる。
ぎゃあ、ぎゃあ、という感じで泣く我が子を見て、
わたしの第一声は「うわあああ、人間だ!!」であったorz
「ようやく会えた~w」なんて感動は一つもなかった。
とにかく「人間が出てきた!」という驚きと、
「ちゃんと目、鼻、口ついてる! 手足ちゃんとついてる!
なんだこれ? なんだこれ!? 人間が出てきた!?」という
混乱に近いハイテンションだけが存在していたorz

その横で「おお、すごい。へその緒って白いんですね」と
感動している旦那君。ほんとだ、なんか白いのが長々と繋がってる。
というかへその緒って当然ながら自分のおへそと繋がっているから、
股のあいだになんかまだぬるぬるしたのが入っているのを感じる……
気持ち悪っorz

胸のあたりに油紙っぽいものを敷かれ、
○子ちゃんを抱っこさせられる。
うわあああ、なんか生暖かい。しかもくねくねしてる。
うわあ、うわぁ、という気分でいっぱい。
とはいえ、よかった、産まれたんだね、という喜びが
じわじわ這い上がってきて、
旦那君もほっとした様子でにこにこしてる。
「生まれてくるときお腹がぼこってなるのがよくわかった」と
結構冷静に状況を見ていたらしい旦那君。
わたしが事前に「出産のときはなにもしなくていい。
頑張れとか言わないで。手も握らなくていい」と
口を酸っぱくして言っていたので、
本当にその通り、息を殺してただ立っているだけでした。
わたしにとってはそれがとてもありがたかったです。
下手に応援されたら「うるさい、ふざけんな!」って
なってたと思うし。空気のようにしてくれたおかげで、
本当に痛みだけに集中できてよかったです。

そして○子ちゃんは身体をきれいにするため別室へ。
わたしもまだ処置が残っているから、
ということで追い出される旦那君。
そのあいだわたしは足にまかれていた覆いを外され、
氷嚢っぽいものをお腹に乗せられる。
そして後産の処理。

理事長先生がへその緒をひょろひょろ引っ張って、
痛みもない状態で胎盤がでろっと出てくる。
うわ~、紫色~、グロ~、と思いつつ、
このときは痛みもなかったのでなんか安心してる。

んが、地獄第二弾はこのあとに待っていた。
「じゃ、縫っていくね~。まず麻酔ね」と理事長先生。
はっ、そうか、切ったんだから縫うんだよな、
と今になってその事実に突き当たるわたし。
そして……
股にぶすっと麻酔が打たれる。
それがなんかめちゃくちゃ痛い!
不思議なことに出産した瞬間、
それまで眠くて仕方なかった意識がすっかり覚醒して、
もう眠気を感じるどころか、すべての感覚が
覚醒モードで鋭敏になっている!
おかげでとにかく縫うのが痛い!
糸を通すたびに「痛い!」切られるたびに「痛い!」と
懲りずに泣き叫ぶわたしorz
しかもいきんだ反動で筋肉が麻痺したらしく、
手足がぶるぶると震えまくって仕方がない。
止めようと思っても止まらない震えに、
再び混乱に突き落とされるわたし。
痛いし寒いし震え止まらないしですっかり怖くなって、
ひと針縫われるごとに「痛い! もう痛いのやだ!」と
病院中に響き渡る声(大げさではなく、本当に)で
泣き叫び、わめきまくるわたしorz
看護婦さんの手を握りながら「あとどのくらい?
どのくらいで終わる?」とめそめそorz
「あともうちょっとだよー」と答えながら、看護婦さん、
「ごめんね、もうちょっとだよって言ってばっかりだよね、わたし(笑
だいたい『もうちょっと』で終わってないよね」と
おちゃめに笑っていましたが(苦笑

ようやく縫い終わる頃にはもうぐったりorz
でもそのころには○子ちゃんもすっかり綺麗になって戻ってきて、
旦那君と一緒に家族三人でぱちりと一枚、記念撮影。
わたしの処置が終わり毛布を掛けられ、
ようやく家族ともご対面。
「あんた、うるさくしすぎ」と母に怒られる頃には
わたしも多少正気に戻ってきて、
本当にすいませんという気分でいっぱいorz
動けない私の周りでスマホで写真撮りまくる両親。
なんという甘々ぶりなのでしょうorz
でもみんなに愛されて祝福されて生まれてこられて、
本当によかったね、という気持ちでいっぱい。

ああ、ようやく幸せな気分になってきたよorz

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いやいや、

へその緒は胎盤につながってて自分のへそには繋がってないです(笑)

でもこのチクチクの痛み、思い出した。

目が冴えるのはアドレナリンが出てるからですかね~

コメントありがとうございます。

りえっぺさん、こんにちは。

> へその緒は胎盤につながってて自分のへそには繋がってないです(笑)
ナ、ナンダッテー!?
そ、そうなんだ、二十余年ずっと勘違いしてた……orz
教えてくださってありがとうございます(恥

縫うときの痛みは陣痛とはまた別種ですよね……orz
意識冴えわたっていたせいもあって、思い出すだけで身震いします(涙
Secre

プロフィール

佐倉紫

Author:佐倉紫
『ベリー・ウィッシュな日々』
育児他、日常のつれづれ日記。
時々Web小説の更新情報。
商業紙などのお仕事情報。


―佐倉紫(さくらゆかり)―

一月生まれ。水瓶座。
夫、娘○子(三歳四ヶ月)、
息子○市(一歳九ヶ月)と
ほのぼの四人暮らし。

TL作家として既刊あり。

ムーンライトノベルズ様
にて同名義で活動中。


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『王家の秘薬は受難な甘さ』
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